LHサージとは?

不妊治療について調べるなかで「LHサージ」という言葉を見聞きしたことがある方は多いでしょう。

LHサージは排卵に欠かせない現象で、正確に把握することで妊娠成功率の向上につながります。

ここでは、LHサージについて詳しく解説します。

LHサージとは

LHサージとは、黄体形成ホルモン(LH)が急激に増加する現象です。このホルモンの急上昇により、卵巣から成熟した卵子が放出される排卵が引き起こされます。通常、月経周期の中頃(月経開始から2週間目前後)にLHサージが起こり、これを検知することで排卵のタイミングを知ることができます.

LHサージと卵胞ホルモンの関係

卵胞ホルモンは、卵巣内の卵胞から分泌され、主に月経周期の前半に増加します。このホルモンは子宮内膜を厚くし、妊娠に備える役割を果たします。

卵胞ホルモンの上昇に伴い、脳下垂体に信号が送られ、下垂体からLHが分泌される準備が整います。この結果、LHサージが発生し、成熟した卵子の排出をうながします。すなわち、卵胞ホルモンの増加はLHサージを引き起こし、排卵を導く重要な要素となっています。正常な排卵と妊娠の可能性を高めるためには、卵胞ホルモンのバランスがとれていることが欠かせません。

妊活においてLHサージを把握する重要性

LHサージを把握することは、排卵のタイミングを正確に知るために非常に重要です。黄体形成ホルモン(LH)が急激に増加すると、成熟した卵子が卵巣から放出されます。黄体形成ホルモンの急増を検知することで、最も妊娠しやすい期間を特定でき、計画的なタイミングでの性生活が可能になります。

LHサージの検出方法

基礎体温の変動から予測する

基礎体温が最も下がる日(低温期の最終日)は、通常LHサージが起こる日と一致します。つまり、体温が急に0.3℃程度下がった日には、すでにLHサージが始まっている可能性が高いのです。

この体温が下がった翌日から体温は上昇し始め、高温期に入ります。数か月分の基礎体温表をつけることで、ご自身の周期におけるLHサージのパターンが見えてきます。しかし実際には、基礎体温表を後から見返しても、一番下がった日を見つけることはなかなか難しいため、深く考えすぎなくても大丈夫です。 

尿検査で尿中LH濃度を測定する

市販の排卵検査薬を使用することで、尿中のLH濃度を簡単に測定できます。ルナルナなどのアプリで排卵が予測される時期に、1日1〜2回程度測定を行います。

検査薬の反応線が対照線と同じくらい、もしくはそれ以上の濃さになった場合、LHサージが起きていると判断できます。より正確に把握したい場合は、朝と夕方の1日2回測定することをおすすめします。

経腟超音波検査で卵胞モニタリングを実施する

経腟超音波検査で卵巣内の卵胞の大きさを正確に測ることができます。卵胞は徐々に大きくなり、約18〜20mmまで成長すると排卵準備が整い、LHサージが起こります。

定期的な卵胞モニタリングにより、卵胞の成長過程を観察することで、LHサージの時期をより正確に予測できます。

LHサージを踏まえて妊娠成功率を高める方法

LHサージは、排卵の直前に起こるホルモンの急上昇であり、妊娠の可能性が最も高まるタイミングを知るための重要なサインです。妊娠成功率を高めるには、LHサージが検出されてから24~36時間以内に性交渉を持つことが重要です。排卵日予測キットや基礎体温計などを活用し、ご自身のLHサージのタイミングを把握しましょう。

ただし、ストレスや体調によって排卵日は前後する可能性があります。LHサージ検出後も頻回に夫婦生活を持つことで、妊娠の可能性を高めることができます。

LHサージを誘起するための排卵誘発剤の種類

クロフェミン・レトロゾール(卵子を育てる排卵誘発剤)

クロミフェンとレトロゾールは、排卵を促すために使用されるお薬です。その主な作用は、脳の視床下部や下垂体に働きかけることです。

通常、卵巣から分泌されるエストロゲンは、脳に排卵を抑制する信号を送ります。しかし、クロミフェンはこのエストロゲンの受容体をブロックします。一方レトロゾールは、アロマターゼという物質の働きを抑えることにより、エストロゲンが作られるのを抑制します。

二つの薬は薬理作用が少し異なりますが、脳は「エストロゲンが不足している」と感じ、より多くのLH(黄体化ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)を分泌します。これにより、卵胞の成熟が促され、最終的に排卵が引き起こされるのです。

hCG製剤(排卵を促す排卵誘発剤)

hCG製剤も、排卵を促すために使われるお薬です。hCG製剤で排卵が促される理由は、hCGが体内のLH(黄体化ホルモン)に似ているためです。

hCGが注射されると、体はこれをLHと認識し、強力なLHサージを引き起こします。このホルモンの急激な増加により、成熟した卵胞が破れて卵子が放出され、排卵が促進されるのです。

GnRHアンタゴニスト製剤

GnRHアンタゴニスト製剤は、脳の視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を阻害します。これにより、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑えられます。

特に、排卵を引き起こす急激なLHの上昇(LHサージ)が防がれるため、成熟した卵子の放出が抑制されます。この作用により、治療中の卵胞の管理が容易になり、予想外の排卵を防ぐことができます。

LHサージが検出されないときの対処法

排卵検査薬でLHサージが検出されない場合、次のような対処が考えられます

1.検査のタイミングを見直す、1日2回(朝・夕)の検査を行う、排卵予定日の前後5日間は継続して検査する
2.基礎体温表を併用して排卵時期を予測する
3.超音波でモニタリングを行いつつ、hCG製剤を使用し排卵を促す

当院の不妊治療について

妊娠への近道として、排卵のタイミングを正確に知ることは重要です。自然な排卵を待つだけでなく、必要に応じて排卵を促す治療も選択肢となります。

具体的には、

・排卵日を予測する検査(超音波検査、尿検査など)の実施 
・内服薬や注射による排卵誘発治療

など、状況に合わせた治療を選択できます。

これらの治療の多くは保険が適用されるため、費用面での心配も少なくて済みます。

副作用などの不安がある場合も、十分な説明と継続的なサポートを行っていますので、安心してご相談ください。