人工授精(AIH)

人工授精とは

人工授精 (AIH:Artificial Insemination of Husband)とは、提出していただいた精液を密度勾配遠心法等で濃縮して、女性側の排卵の時期に子宮内に直接注入する方法です。受精から妊娠までの過程は自然妊娠と同じで、比較的女性の体に負担が少ない方法です。

自然妊娠の場合は、精子が腟から子宮まで到達しなければいけませんが、人工授精では直接子宮内に精子を注入するので、タイミング法でなかなか妊娠できない場合に有効です。

人工授精の流れ

STEP1.排卵誘発剤の使用を検討(月経1日目から5日目)

必要に応じて、排卵誘発剤を月経3〜5日目から5日間服用します。
排卵誘発剤は、卵巣を刺激し排卵を促進させる目的で使用します。内服や注射があります。

一般的には排卵障害がある方に使用しますが、排卵誘発剤には黄体機能を高め、基礎体温を安定させる働きもあるため排卵障害がない方にも妊娠率を高める目的で使用します。

STEP2.超音波検査の実施(月経10日目~12日目)

排卵日を特定するために、超音波で卵胞の大きさを確認します。

卵胞の大きさが12mmを超えると1日に約2mmずつ大きくなり20mm前後くらいで排卵します。そのため、超音波検査で卵胞の大きさが20mm程度に育っているか、子宮内膜は厚くなっているかを確認しながら次の受診日や排卵検査の日を決定していきます。

育ちがゆっくりの場合は、下垂体性性腺刺激ホルモン剤(hMG,FSH)の注射を使用して卵胞をしっかり育てることもあります。

STEP3.人工授精の実施(月経12日目~14日目/排卵日前日〜当日)

排卵検査薬で陽性になった翌日か当日、または胎盤性性腺刺激ホルモン(hCG)を注射した翌日に人工授精を行います。

精液の採取方法

精液の採取日前に、禁欲期間を作ってください。3日から7日以内が推奨です。
病院で滅菌済みの容器をお渡しするので、精液をご自宅で採取していただきます。

場合によっては、院内で精液を採取することも可能です。採取後2〜3時間以内に提出してください。

人工授精の方法

提出していただいた精液から、密度勾配遠心法等で良好な精子を選別して回収します。回収した精子をカテーテルに入れて、子宮頸管より子宮腔内へゆっくり注入します。

痛みなどは殆どありません。人工授精後は、感染予防のため抗生剤を処方します。

STEP4.黄体補充療法の実施(月経14日目以降/排卵後)

黄体ホルモンとは子宮内膜を着床と妊娠に適した状態に保つ働きがあります。

黄体機能の低下が認められる(高温期が短い、黄体ホルモン値が低い)場合は、黄体ホルモンを誘発する注射を使用もしくは、黄体ホルモン剤を内服して補充し着床率を高めます。

STEP5.妊娠判定(月経28日目以降)

人工授精をした日から2週間後に尿による妊娠判定を行います。

人工授精(AIH)の成功確率

人工授精での妊娠率は平均で5~10%といわれています。妊娠された方の9割以上の方は、人工授精を5~6回行うことで妊娠しています。

6回以上続けても妊娠に至らない場合は、次の体外受精や顕微授精へとステップアップが有効です。
タイミング法と同様に、女性は加齢に伴い、妊娠率は低下、流産率は上昇します。

人工授精を実施する回数に制限はありませんが、時間の経過と共に妊娠率が低下をしていくことを考慮し回数やステップアップを考える必要があります。

人工授精(AIH)の副作用

精子を注入する際に、稀に下腹部に違和感があったり、出血や腹痛が起こることがありますが、強い痛みが長時間続くことはありません。痛みや出血が長期間続く場合は受診してください。

人工授精(AIH)が向いているケース

  • 軽度の男性不妊症状がある場合
  • 勃起不全などで性交がうまくいかない場合
  • 頸管粘液が少ない、性交後試験(フーナーテスト)が不良な場合
  • タイミング療法を3~6周期以上行っても妊娠しない場合

人工授精(AIH)が向いていないケース

  • 精液所見(精液量、精子数、運動率、奇形率、DNA損傷率)が著しく悪く顕微授精が必要な場合
  • 卵管が閉塞もしくは卵管周囲に癒着がある場合
  • 女性の年齢が高い場合(より妊娠率の高い体外受精や顕微授精へのステップアップをおすすめしています)
  • 最多で6回以上続けても妊娠に至らない場合

当院の人工授精(AIH)について

カップルの意向を伺いながら納得した治療を進めるようサポートさせていただき、人工授精での妊娠を目指していきます。

当院の精液検査には、Sperm Motility Analysis System(SMAS)という精密機器を導入しています。 SMASは、運動精子・不動精子を判別し、精子濃度・運動率を短時間で正確に計測することができる国産の精子運動解析システムです。

人工授精(AIH)の費用

2022年4月より人工授精も保険適用となりました。
周期に2~3回程の受診が必要となります。使用する薬剤や通院回数により費用は異なりますが、1周期8,000円〜10,000円ほどとなります。

人工授精の予約について

予約の必要はありません。人工授精の予定日に来院してください。
精液を提出いただいた順番で検査、処理を行います。

▼来院時間

午前の診察の場合 8:30-12:00(月~土)
午後の診察の場合 16:00-18:30(月・水・金)
※日・祝日は行いません。