精子凍結保存

精子凍結保存とは

精子凍結保存とは、射精によって得られた精子や、TESE(精巣内精子採取術)やMESA(精巣上体精子採取術)などの手術で採取した精子を保存液で処理し、-196℃の超低温(液体窒素)で保存する技術です。

不妊治療では限られた期間を有効に使うために、さまざまな工夫が必要です。そのひとつが「精子凍結保存」です。

精子凍結保存なら、旦那様に単身赴任や長期出張、射精困難などの事情がある場合にも、奥様の採卵のタイミングに合わせて使用することができます。

凍結保存した精子は半永久的に保存することができます。精子凍結は医学的に安全性が立証されています。

しかし、凍結した精子は少なからずダメージを受け、運動率が低下します。この原因は、主に精子尾部の断裂による前進運動の低下です。運動率が低下した場合でも、活発な精子を再度回収・選別して治療に用います。

運動精子が非常に少ない方は、凍結保存1本では体外受精で精子が足らなくなる場合がありますので、複数本保存しておくことをお勧めしています。

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精子凍結保存の対象となる方

既婚男性の場合 

・体外受精当日に精子を採精できない場合
・精子減少症や無精子症の場合
・閉塞性無精子症で精路の再建ができず射出が不可能な場合
・非閉塞性無精子症の場合

未婚男性の場合

当院では特別な理由のない未婚の方の精子凍結は実施していません。

特別な理由とは、がんや疾患の治療で精子が減少する場合などです。このような場合、治療前に自費で精子凍結を行うことがあります。

(施設要件・認定がありますので、相談される施設が該当するかご確認ください。)

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精子凍結保存の流れ(当院の場合)

射出精子の凍結精子保存の流れ

*予約前の感染症検査について*

凍結精子を安全に管理するために、感染症(HBs抗原・HCV抗体・梅毒(TPHA・RPR))やHIVを前もって検査していただきます。(有効期限は検査日から1年)

検査結果が出るまでに3日程度かかるため、余裕をもって検査を受けていただくようにお願いいたします。

予約について

予約は診療時間内に病院受付、またはお電話にてお願いします(☏052-221-1595)。
凍結予定日の2日前までに予約してください。

*当日の流れについて*

① お渡しした容器に精液を採取し、採取後1〜2時間以内に提出してください。
② 同意書や感染症結果を当日持参される方は受付にて提出してください。
③ 提出時間は昼12時までです。院内での採精許可が出ている方は午前11時までに来院してください。
④ 結果は院内もしくは電話で、必ず当日確認していただきます。
注) 精子が認められない場合や運動精子が著しく少ない場合は相談の上、凍結を中止することがあります。

精巣内精子採取術(TESE)・顕微鏡下精巣上体精子吸引術(MESA)を行う場合の流れ

手術を受ける際の流れに関しては、手術を行う病院の指示に従ってください。

手術日が決まったら、予約をいれてください

手術日が決まった時点で成田産婦人科検査室(直通 052-221-5317)に連絡してください。

電話は午後1時から午後5時の間にお願いします。

<伝えていただく内容>
①    診察券番号・ご夫婦のお名前
②    手術日
③    採取物の持参時間(または手術開始時間)
※当日午後5時を過ぎる場合は、再度ご連絡ください。

当日の流れについて

<持参していただく物>
①    採取物
②    凍結精子同意書
③    感染症検査の結果(コピー可)
④    【費用】
⑤ 夫の保険証

凍結結果がわかるのは、翌日の午前10時以降です。

精子が確認され凍結できた場合は、精子凍結保存管理料がかかります。

1週間以内に夫本人が外来診察で確認してください。(電話での問い合わせはできません)

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 精子凍結保存のメリット

パートナーが不在でも不妊治療を進められる

体外受精(IVF)や人工授精(AIH)の際、夫(パートナー)が出張・単身赴任などで長期不在の場合でも、精子を凍結しておけば不妊治療を実施することができます。夫(パートナー)のスケジュールにかかわらず、奥様の排卵スケジュールに合わせて治療を実施できるため、適切なタイミングを逃しません。

顕微授精をするための精子を確保できる

採卵当日の精液に運動精子が見つからない可能性のある方は、事前に精子の凍結をお願いしています。

抗がん剤や放射線治療などによるダメージを受ける前に保存ができる

悪性腫瘍などの病気で抗がん剤や放射線治療を行うと、精巣に直接ダメージが加わるため、精子が正常に発育しなくなり、乏精子症や精子無力症を引き起こす可能性があります。影響の大きさは、薬の種類や量、放射線の照射量、照射部位などによって異なりますが、将来のために精子を保存しておくことも可能です。(がん生殖)

精子凍結保存のデメリット

運動率は元の精子よりも低下する

精子を凍結すると、運動率は元の精子よりも低下します。場合によっては、運動率が半分以下になってしまうこともあります。しかし、残った精子の運動性が保たれていれば受精には問題ありません。

使用先が限定される場合がある

凍結した精子は運動精子数が低下するため、体外受精(IVF)や人工授精(AIH)では妊娠に至らないと評価されることがあります。
凍結精子を使用する場合、顕微授精(ICSI)は可能ですが、体外受精(IVF)は不可能な場合が多くみられます。

精子凍結保存の安全性

遺伝性の病気を除けば、悪性腫瘍などの治療後に凍結融解精子を用いた体外受精・顕微授精で産まれた子どもにおいて、先天異常が起きやすいという報告は現在のところありません。

凍結融解精子を用いて生まれたお子様が、新鮮精子を用いて生まれたお子様と比べて発育状態に大きな差があった、先天奇形などの異常の頻度が高くなったという報告もありません。
凍結融解精子によるヒト妊娠例(AID)は1954年から報告されており、比較的古くから行なわれている方法です。

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当院における精子凍結保存の期限

保存期間は凍結日より1年間です。ただし、1年を越えて保存期間の延長を希望する場合は1年毎に更新し、最終保存期間は凍結日より5年となります。(更新のない場合は、保存期限が切れた時点で自動的に廃棄となります)

当院における精子凍結保存の実施費用

▼射出精子の場合

感染症検査費用凍結費用
保険1,100円3,000円
自費(税込み)4,400円16,500円/1回分

※採精1回分の精子を3回分に分けた場合は49,500円となります(自費)

▼精巣内精子採取術(TESE)・顕微鏡下精巣上体精子吸引術(MESA)の場合

検査費用凍結保存管理料
保険15,000円4,500円
自費(税込み)55,000円16,500円

当院の精子凍結保存について

当院では、凍結精子はタイミングを合わせるために有効な手段だと考えています。

しかしながら、ごく稀に融解後の精子に運動精子が認められない場合があります。この場合、不動でも生存性がある精子かどうかを判断するHOSテスト(※)を行い、反応があった精子を顕微授精に使用します。このテストが陽性にならない場合には、顕微授精を行うことができません。

より良好な胚を提供できるよう、できるだけ新鮮な精子を使用していただきたいと考えております。そのため、保険的に凍結精子を保存していただいた場合でも、採卵当日に可能であれば新鮮な精子を提出していただくことを推奨しています。

※精子膨化テスト(hypoosmotic swilling test : HOST)とは

低浸透圧液中で生じる精子尾部の膨化を形態学的に観察して、細胞膜の正常性を指標に不動精子の生存性を判断するものです。

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