透明帯とは
透明帯(zona pellucida)は、ヒトの卵子の周囲を覆う薄い膜です。主に糖タンパク質からできています。この膜の厚さは約10~15マイクロメートルで、卵子を“殻”のように包み、さまざまな役割を担っています。
主な役割には、
- ・受精時に複数の精子が侵入するのを防ぐこと(多精子受精の防止)
- ・受精卵が初期胚として発育している間、細胞がバラバラにならないように守ること
- ・卵管や子宮への移動中に胚が壁に付着しないようにすること
などがあります。
胚が成長して着床する直前には、透明帯が破れて胚が外へ“ハッチング”(透明帯から脱出)する必要があります。
透明帯除去法(ゾナフリー)とは
受精卵の中には、その後細胞が分割して増えていく過程において「フラグメント」と呼ばれる細胞片が多数発生し、良好な胚盤胞まで発育できないものがあります。
フラグメントの発生原因は、加齢・染色体異常・紡錘体異常・卵巣過剰刺激など様々です。
胚発育不良(フラグメントの増加)となる過程で、透明帯と卵細胞膜の癒着の発生が確認され、この癒着が繊維状構造物により生じていると考えられています。
透明帯除去法(ゾナフリー)は、体外受精/顕微授精後の受精卵に対して、透明帯を人工的に除去した後に受精卵/胚を培養していく特殊な方法です。透明帯を除去することでフラグメントの発生が減少し、その後の培養成績が向上することにより、妊娠の可能性が高まることが報告されています。
難治性の発育不良胚に対する新しい治療法として、先進的なクリニックを中心に導入が進んでいます。
透明帯除去法を選択すべき方
受精卵が発育していく過程において、細胞が分割するときにフラグメントが多く発生することで、胚の発育不良が起きていると考えられる方が対象となります。
透明帯除去法の実施方法
- 1.受精確認後(前核期)の受精卵を準備
- 2.高張液で収縮を促す
透明帯と細胞質の隙間をつくるため、受精卵を高張液に数分浸すことで細胞を縮ませます。 - 3.レーザーで透明帯に穴を開ける
レーザー装置を使い、透明帯の円周に対して1/2〜1/3程度の穴を開けます。 - 4.ガラスピペットで分離操作
開けた穴にガラスピペットを挿入し、培養液を吹きかけながら透明帯と細胞質の癒着を剥がします。 - 5.透明帯を完全に除去
透明帯の穴から細胞質を押し出すことにより、透明帯から受精卵が完全に取り出された状態になります。 - 6.専用インキュベーターで培養
透明帯のない受精卵を、タイムラプスインキュベーターで胚盤胞まで育てます。 - 7.発育確認後に移植または凍結保存
良好な胚盤胞が得られれば新鮮胚で移植、もしくは凍結保存します。

透明帯除去法で考えられるリスク
- ・透明帯の癒着がひどい場合は、受精卵が傷ついたり変性したりしてしまうことがあります。
- ・あまりにも癒着がひどく、形態的に明らかに変性してしまうと判断した胚に対しては行うことができません。
当院における透明帯除去法の費用
保険適用とならないため、自費での採卵の方のみが実施できる方法となります。
- 透明帯除去基本料:33,000円(税込み)
- 加算(2個目〜) : 7,700円(税込み)/個
当院の透明帯除去法について
当院にて、胚盤胞になりにくく初期胚時点でフラグメント発生が顕著な患者様に対して透明帯除去法を実施した結果、良好な胚盤胞が得られ妊娠が成立し、2025年8月時点で3人の赤ちゃんが無事に産まれました。
受精卵が得られても、その後の胚発育が不良で胚盤胞にならず、移植や凍結が実施できない患者様にとって、透明帯除去法は選択可能なひとつの治療方法であると考えております。
透明帯除去法は、透明帯と細胞質の癒着を除去する操作であるため、高度な技術が必要です。当院では、長年の経験を持つ熟練の培養士が、受精卵の形態をなるべく変形させないよう慎重に、かつ短時間で行っています。